サーキットを初めて走行される方へ
1. 最初に
「サーキットを走りたい!」と考えている方はたくさんいらっしゃると思いますが、その目的は様々でしょう。話の種に一度経験してみたい、速度違反を気にせずにスピードを出したい、かっこいい、面白そう、膝をすりたい、将来レースに参加したい、バイクやクルマが好きだから運転が上手くなりたい、等々。
どんな目的であっても、ひとつだけ常に意識していなければならない事があります。それはバイクやクルマは、人間には不可能な速度を簡単に出すことができる、と言うことです。速度が速くなればなるほど、そのコントロールは難しくなります。そして、コントロールの限界を超えると、思いがけないアクシデントに繋がることもあります。
その限界を超えないために必要なのは意思の力(自制心)です。バイクやクルマでサーキットを走ると、速度に関係なく気持ちがいいです。気持ちがいいから「ハイな気分」になりやすいのです。そして、知らないうちに一線を越えてしまうことがあるかもしれません。モータースポーツは、バイクやクルマという非常に高価な道具を使うスポーツですから「ハイな気分」の代償も、当然ですが高額になりやすいものです。もちろん、最も大切な自分自身を傷つけてしまう恐れもあります。
また、一度コースインすると、走行が終了してピットに戻るまでの間は「ライダー・ドライバー」とコース管制には、シグナル、フラッグ以外にコミュニケーションツールはありません。シグナル、フラッグの指示通りに実行するのは、ライダー、ドライバーの意思と責任感だけです。つまりサーキット走行とは「ライダー・ドライバー」ご自身が実行していただく、マナーと自己管理責任のおかげで成り立っているのです。
一部の方は、初めての走行から走行タイムを気にされますが、走行タイムはあくまでも今のご自身のスキルを知る方法のひとつにすぎません。トレーニングを積み重ねた方がマークする走行タイムは、「すげーヤツもいるんだなー」くらいにお考え下さいね。
2. センターラインが無い!
一般公道(高速道路も含む)にあってサーキットに無いものがあります。それはセンターラインです。センターラインはサーキットにありません(例外はアメリカのオーバルコースだけです)。センターラインは道幅が6m以上の道路には必ず引かれています。また、道幅が7m以上の道路には路側線も引かれています。路側線はセンターラインから3.5m離れています。つまり、一般公道では3mから3.5m幅の走行レーンが明確に表示されているわけです。そのため、一般公道ではセンターラインに沿って走らせる、あるいは走行レーンに収まるように走らせればよいわけです。とても簡単な方法で、しかも楽ですね。しかし、そのために悪い癖が身についてしまうのも事実です。
その悪い癖というのは、「目線が近くなる」事です。一般公道を走らせている時に、どこを見ているか思い浮かべてください。せいぜい数十m先のセンターライン、あるいは左カーブの内側路側線しか見ていない事に思い当たると思います。それは、ある意味で当然のことです。なぜなら、一般公道の路側には側溝があったり、障害物の役割(歩道を守るため)の縁石などがあるので、道路からはみ出すことはクルマが壊れることになり、慎重になるのは当然です。
しかし、サーキットでも一般公道でも「目線が近い」ことはとても不利ですし、危険です。「目線が近い」と、カーブの形を「読む」ことが難しくなるし、カーブの形を「読めない」から、走行ラインが乱れても気付きにくくなります。また、前方で起こっているかもしれないアクシデントに対応が遅れてしまい、回避動作が遅くなってしまいます。
3. 「目線」と「視野」と「不安感」
サーキットを走るとき「目線が近い」こと以外にも、本人が気付かないうちに起こっていることがあります。それは「視野」が極端に狭くなることです。通常、人間の視野は左右に180度以上ありますが、走行中の視野は左右に20~30度、または、もっと狭くなります。身近な例として、パーカーのフードをかぶると「視野」は90度ぐらいまで制限されますので、これだけでもかなり不安を覚える方が多いと思います。ヘルメットをかぶった時と同じです。これが20~30度、あるいは、もっと狭くなるわけですから、いつもなら普通に見られるリアビューミラーでさえ見にくくなります。「視野」が狭くなるということは、本来必要な道路情報が得られませんので、運転操作に支障が出やすくなり、多くの方が「不安感」を覚えると思います。そして、この「不安感」には敏感になって下さい。「不安感」は道路状況を把握できていない、と感じた「防衛本能」が発する「警告」です。同じような「不安感」をブレーキング時、コーナリング時にも感じることがあります。バイクやクルマが安定したトラクションを得ていない、と感じている「警告」なのです。この「不安感」を感じたらスピードダウンすることが最善の方法です。
話を「視野」に戻しましょう。速度が上がって狭くなった「視野」を補うにはどうしたらよいのでしょう?動体視力をあげ、「視野」を広げる訓練を積む事も大変よいのですが、短時間に成果が上がることではありません。「視野」の不足を補ってくれるのが、前項で触れている「目線」の移動です。「目線」をカーブの出口方向に向けることで必要な「視野」が確保できます。バイクでもクルマでも基本は同じで、なるべく路面と水平に頭を保ち、カーブの出口方向へ顔を向かせると自然に必要な「視野」が得やすくなります。つまり、「目線が遠い」ということは、横断歩道の左右確認のように、なるべく顔をカーブの出口方向へ向けながらハンドル操作をする、ということです。バイクは前傾姿勢ですから、「目線を遠く」することはより難しいため、意識的に行うことが必要です。
ここまでが、サーキットを初めて走る方にまず心がけて頂きたい基本の部分です。安全に楽しく、モータースポーツデビューしましょう!!日常を少しだけ離れて、サーキットを走る爽快感は、やみつきになりますよ!まずは見学だけでも、ぜひ一度ご来場下さい。スタッフ一同、心よりお待ちしております。
㈱スポーツランドやまなし
代表取締役 上野 尚人
㈱スポーツランドやまなし
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